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海外でのプログラミング教育への取り組み~アジア・カリフォルニア(US)編~

みなさんこんにちは!子ども向けプログラミング教室Tech for elementary(以下、TFE)本部の澤部アイコです。

 

海外におけるプログラミング教育のご紹介、前編ではイングランドとエストニアの取り組みと現状をお伝えしてきました。どちらもプログラミング教育への取り組みが早く、日本でも大いに参考にされています。

 

この後編では、アジア諸国や、情報通信産業のメッカとも言われるシリコンバレーのあるカリフォルニア州(US)の状況をご紹介しますね。

 

 

アジア諸国におけるプログラミング教育への取り組み

 

 

2014年に文部科学省が発表した「諸外国におけるプログラミング教育に関する調査研究」では、韓国・シンガポール・上海・香港・台湾・インド・イスラエルなどがアジアにおける対象となりました。アジアのなかでは、コンピュータの導入や教育が進んでいる地域です。

 

このうち、プログラミング教育が必修化されていたのは下の2地域。
韓国:初等教育5~6年(10~11歳)
上海:初等~中等教育(6~14歳)※ただし科目名は“情報科学技術”であり、プログラミング教育の実施の有無は未確認

 

その他の地域では、プログラミング教育の導入時期やコース設定は学校や自治体の裁量に任され、多くは選択制のコースで実施されています。

 

多くの地域で従来の「コンピュータの使い方を学ぶ」授業のあり方を改め、
・コンピュータを使って身の回りの問題を解決する方法を見つける
・専門的な技術や知識を持った人材を育成する
といったことを目標としていますが、カリキュラムの転換と人材確保には非常に苦労しています。

 

「日本と変わらないな」と、思いませんでしたか?現状も課題も、こらからプログラミング教育を導入する準備段階の日本と、たいして差がないように感じられるかもしれません。

 

次の章では、これらアジアの諸外国が、プログラミング教育に対してどのような意識を持っているかについてお話ししますね。

 

 

アジア諸国におけるプログラミング教育に対する意識

 

 

① 韓国
韓国では、情報通信技術の必要性は広く浸透しており、国家にも国民にも、これをなくしては国が成り立たなくなるという危機意識が強くあります。和田勉「韓国の情報教育 – 初・中等学校情報通信技術(ICT)教育運営指針と改訂中・高等学校教育課程 」では、以下のように記されています。

 

“ 韓国の資源は人材のみであり、またこれからの世界で情報関係の産業分野はきわめて重要である。またその養成は、大学教育段階からいきなり始めてもうまくいかず、初中等教育の段階からそれを見据えた教育が必要である ”

 

② シンガポール
国土をほとんど持たないシンガポールでは、1990年代から情報通信産業を国の基盤産業と位置づけ、教育分野にも積極的にICT(情報通信技術)を導入してきました。教育省が発表した「21 世紀に必要な能力」では、“ グローバル化、人口動態の変化、技術の発展が将来の原動力になり、学生たちはそうした社会の中でチャンスをつかんでいかなければならない” と記されています。

 

英語が必須であると判断すれば、小学校の授業でさえ、母国語であるマレー語ではなく英語で行うことをためらわない国です。領土の小ささをいかし、エストニアのような徹底したICT化が行われる可能性もあるでしょう。

 

③ 上海
1984年、鄧小平氏の「コンピュータ教育は子どもから始めるべきである」という指示から情報技術教育が重視され、2000年には政府主導によって初等教育における情報技術教育が本格的に始められています。

 

中国中央政府は明確な計画を打ち出し、ICT活用教育を進めてきました。パソコンなどの設備や通信が十分でない現状はあるものの、政策と資金両面からの支援を積極的に行っています。

 

アジア諸国の現状は日本と大きくちがいませんが、「今この教育に失敗すれば、自国に未来はない」という意識を、政府や国民が早ければ1970年代から持っていたことがわかります。

 

では、IT分野において短期間に爆発的な成長をとげたシリコンバレーのあるアメリカ・カリフォルニア州ではどうでしょうか。

 

 

カリフォルニア州(US)での取り組み

 

 

情報通信産業において、世界から注目の集まるシリコンバレーは、アメリカ・カリフォルニア州にあります。マイクロソフト・Apple・Facebook・Amazonなど、数々のモンスターサービスを生み出した土地です。人材育成には世界で一番注力しているようなイメージがありますよね。

 

ところがカリフォルニア州は慢性的な財政難にあり、州教育局では初等・中等教育においてプログラミング教育を必修科目としていないばかりか、プログラミング教育の指導者を雇うことすら難しいという現状があります。

 

高等教育において、コンピュータサイエンスを専攻する学生が全米平均と比較しても少ないことが問題視され、2014年になってようやく義務教育にコンピュータサイエンスを取り入れることが議論され始めました。

 

裕福な家庭の子供たちが多い学校では、政府の打開策を待たず、保護者がプログラミング教育指導者の費用を負担してプログラミング教育を実施しているという事例も報告されています。

 

コンピュータサイエンスの資格を持った人材の需要は十分にあるものの、州としてはその需要を満たす学生を育成できていないことが課題とされています。

 

ビジネスと能力が直結する土地柄にもかかわらず、この現状はかなり意外なものですね。

 

政策・インフラの整備・指導者の育成・設備・カリキュラムの設定、そしてそれらに対するバランスのとれた投資。これまで見てきた国々の事例からは、プログラミング教育に必要なものが見えてきました。それぞれの地域が、歴史や経済的な背景のなかで多種多様な問題を抱えながらも、プログラミング教育に向きあっていることもわかりました。

 

日本は決して遅れてはいない。そう言える一方で、何かが足りないように感じるのも事実です。ではプログラミング教育を成功させるために、私たち一人ひとりが今からできることって何でしょうか?

 

 

危機意識と、家庭や個人ができること

 

 

イギリス・オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン教授は、「10年後、AIによって今ある仕事の47%がなくなる」と話しました。

 

事実、アジア経済の中心となる国や地域では、何十年も前からそういった危機意識を持ち、コンピュータを基盤とする経済においても成長を維持し続けるべく、政策が打ち出されてきました。人材育成には低年齢からのプログラミングが効果的だとされ、今まさにアジアをふくむ世界中で初等教育におけるプログラミング教育が始まろうとしています。

 

現代の環境に、ゼロから教育や通信のシステムを導入できたエストニアは理想のモデルです。一方でこれからはどの国も、歴史や民族のさまざまな事情を抱えながら新しいものを取り入れる、イングランドのやり方を習わざるを得ないでしょう。それは日本も同じです。

 

ただ、それは国家レベルの話です。

 

前編の最後では、「作ってきた」エストニアと「与えられた」イングランドに、何かヒントがあるのではないかとお話ししました。

 

“作ること“を学ぶはずのプログラミング教育が、与えられるのはおかしい。エストニアのプログラミング教育が子どもたちだけでなく国民全体に浸透しているのは、教育や生活環境を便利にするシステムそのものを、子どもから大人までみんなが参加して作ってきたからです。

 

大きな規模にならざるをえない国の政策が、スムーズに進まないのは避けられないことです。たくさんの生徒を抱える学校も同じです。

 

では家庭ならどうでしょう?親子で、身近なところから少しずつ、コンピュータに慣れていくことはできないでしょうか。

 

新しく買った電化製品の使い方や、スマートフォンやパソコンを使った家族のスケジュール管理。身近な道具を使いこなせたことや、家族がもっとつながっていられること。それらは成功体験となり、子どもたちのコンピュータへの興味を高めてくれるはずです。そしてその経験はいつか、子どもたち自身を導く力となります。

 

プログラミングに間違いはありません。小さなことから始めて、試行錯誤しながら作っていく。一人で始めたことが、いつか社会に、世界につながっていくのがプログラミングです。

 

国や学校が与えてくれるのを待つのではなく、親子で始めましょう。

 

子どもたちに芽吹いた興味のその先を、私たちTFEもサポートしていきます。

 

 

Text by :黒田 靜

 

 

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