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高齢化地域にプログラミング教室を!収益増にこだわるママ起業家の思い

大阪府豊能町で、2018年4月から「こどもプログラミング教室ひなたぼっこ」を運営する大村みどりさん。高齢化率が43%にのぼるこの地域で、2012年にシニアを対象としたパソコン教室からスタートしました。「誰も来ない教室で飾りを作りつづけた」オープンの日から5年。ひたむきに集客に取り組み、「お金持ちになったら…」と夢を語ります。

 

「インターネットにつながらないから大村を呼べ」興味が切り開いたキャリア

 

「何でも屋だった」ゴルフ場での勤務時代は、夏祭りの司会も引き受けた

 

派遣社員として働いていた1997年、大村さんは24歳でゴルフ場に勤めはじめました。立ち上げからかかわったその職場では、フロント・事務・営業企画だけでなくお風呂掃除からビールを注ぐ研修まで、あらゆることをこなしたと話します。

 

大村さん 「その職場では、なんでも自分たちでやらなければいけませんでした。社内のコンピューターは最初に業者とのやりとりの窓口になったことで、自然と私がインターネット担当になったんです。上司はインターネットにつながらなくなると『大村を呼べ』と。わからないなりに取り組んでいるうちに、興味がわいてきました」

 

コンピューターやネットワークに興味を持った大村さんは、本格的に勉強しようとパソコン教室を探します。

 

大村さん 「パソコン教室へ問い合わせてコンピューターの仕組みや、なぜコンピューターが動くのかを教えてくれる講座を受講したいと言ったら、そういう講座はないけれど、派遣で働いているならインストラクターの資格を取ったら有利だとすすめられたんです。」

 

押しの強い営業担当者に言われるがまま、70万円の講座に申し込んでしまった大村さん。「もう後には引けない。資格を取ってステップアップするしかない」と覚悟を決めました。

 

マイクロソフト公認のインストラクター資格を取るべく、パソコン教室に通いながら派遣社員としていくつかの会社に勤めた大村さん。電話サポートからネットワークエンジニアへとキャリアをつんでいきました。

 

ところがワード・エクセルと順調にインストラクター講座を修了し、最後のアクセスを受講中、病魔が大村さんを襲います。何度も腹痛で救急車を呼び、毎月のように入院をくり返した末、大村さんが受けた診断はガン。

 

幸いにも初期段階で発見されたため、仕事を続けながら手術と抗がん剤治療を受け、その後結婚して娘を出産しました。逆境に負けることなく続けてきたネットワークエンジニアの仕事には自信を持ち、やりがいを感じていたといいます。

 

一方で、プライベートにはまたも波がおしよせました。

 

「開業したけど集客できない」自信を喪失し、あがいた日々

 

開講1年半ごろ。小学生向け出張パソコン講座も開講した

 

大村さん 「東京に住んでいたのですが、離婚して実家のある大阪に戻ろうと決めたんです。自分にできることは何か、自分はどうありたいかを改めて考えました。そのとき、これまで取ってきた資格があれば、好きなコンピューターの仕事を続けられると思いました。まだ幼い娘を長い時間預けたくなかったので、家でできる仕事をとも考えていました」

 

東京にいるあいだに離婚後の生活基盤を固めておこうと考えた大村さんは、パソコン教室をフランチャイズ展開する会社と契約。大阪でのシニアを対象としたパソコン教室開校に向けて、準備をすすめました。

 

2012年11月、39歳の大村さんが大阪で迎えたパソコン教室のオープン初日。この日のためにポスティング会社にチラシの配布を依頼し、フランチャイズの本部からも応援に来てもらって生徒さんを待ちました。

 

大村さん 「教室へは、誰も来ませんでした。本部から来てくれた応援の女性と二人で、教室の飾りを作って一日が終わりました」

 

大村さんはこの日からずっと、自信を喪失していたとふり返ります。

 

後になって、ポスティング会社が依頼した日にチラシを配っていなかったことが発覚。クレームを入れると数日後にポスティングされたことは確認できたものの、急激に生徒さんが増えることはありませんでした。

 

大村さん 「4ヶ月たって、ようやく生徒さんが4人定着したような状態でした。本部の言うとおりにしていれば、集客は自然にできるものだと思い込んでいたんです。でも生徒さんは全然増えなくて」

 

娘との生活を優先したいと考えていた大村さんは、本部の理念を共有できないと感じ、地元大阪でパソコン教室を運営するアドバイザーを得て改めて経営と向き合いました。

 

高齢化率43%⁉豊能に住む、数少ないママと子どもたちにプログラミング教室を

 

子ども向けプログラミング教室の体験会には、たくさんの申し込みがあった

 

大村さんがシニアを対象としたパソコン教室をオープンしたのは、教室がある大阪府豊能町の高齢化率が43%にものぼっていた背景がありました。

 

パソコンの電源も入れたことがない初心者や、「何度聞いても覚えられない」とコンピューターから遠ざかるシニアに、コンピューターの楽しさを伝えたいと思ったことが原点でした。

 

また、アドバイザーからの指導で少しずつ経営を軌道にのせていた大村さんは、大勢のシニアの影にいるほんのひと握りの、ママと子どもたちにも興味を持つようになりました。

 

コンピューターの世界ではプログラミング教育が注目されはじめ、子どもたちが夢中になりそうなロボットも登場していました。けれど豊能に住む子どもたちが最新の教育にふれるには、1時間以上かけて都心に出かけていく必要があります。

 

「なんとか子どもたちが、プログラミングやロボットにふれるレッスンができないか」。教材やフランチャイズを検討していた大村さんは2017年、子ども向けプログラミング教材を開発していた“Tech for elementary(以下、TFE)に出会います。

 

大村さん 「フランチャイズを展開する会社とはそれまで何度もやりとりしていたので、契約までにはかなり手間と時間がかかることを知っていました。けれどTFEは説明会もオンラインで参加できて、必要な書類はパソコンですぐ見られて、連絡すると本部の澤部さんはすぐに返答してくれる。すべてがスピーディだったんです。そして代表の尾市さんの、『ひとりでも多くの子どもたちにプログラミング教育を届けたい』という思いを聞いて、まさしく今、豊能町に必要なものだと感じてすぐ契約しました」

 

こうして2018年4月、大村さんは「こどもプログラミング教室ひなたぼっこ」をスタートしました。

 

大村さん 「まだスタートしたばかりで、学年が低くなるほどお友だちとのコミュニケーションや、プログラミングとはちがうところに興味を持つ生徒も多い状態です。その子たちとどう向き合うかなど、試行錯誤しながら進めています」

 

「こんなとき、どうしていますか?」大村さんがTFEが運営するSNSのグループで教室の悩みを打ち明けると、すぐに全国の加盟者からアドバイスや教室での実例が届きました。

 

「みんなこうして一人ひとりと向き合って、すべてちがうケースとして寄り添っているんだということがわかった」と話す大村さん。覚悟を確信に変え、日々前進しています。

 

「お金持ちになりたい」野望の裏に隠された幼少期の記憶

 

「他ではなく、ここがいい」と選んでくれた人たちの居場所になれる教室を目指す

 

夢は「お金持ちになること」という大村さん。

 

大村さん 「ここへ通ってきてくれるシニアの生徒さんは、大勢で和気あいあいと集うのではなく、静かに取り組みたいとおっしゃる方が多いんです。なかには1週間、ここでしか人と話さないという人もいます。そんな人がレッスンの前後に、ゆったりと過ごせる広い教室のある家を建てたい。そしてもうひとつは、肢体不自由の方も受け入れられるスペースがほしくて」

 

そう話す大村さんには、忘れられない記憶があります。

 

きっかけは介護ボランティアをしていた両親が、肢体不自由の利用者さんにパソコンを貸してあげたことでした。それまで意思疎通ができなかった人が、足で文字をタイピングし、はじめて周囲の人とコミュニケーションをとる瞬間に立ち会ったのです。

 

大村さん 「パソコンがあったら、今までできなかったことができるようになるんだと思いました。はじめて気持ちが通じあったときの、ご本人やご家族の顔を知っているからこそ、困った人のお手伝いがしたい。『ここじゃないとできない』と言ってくれる人の力になりたいんです」

 

お金持ちになったら。大村さんの夢の先には、大村さんにしか作れない場所で学ぶ、たくさんの生徒が待っているのです。

 

 

Text by:黒田 靜

 

 

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