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教員向けプログラミング教育導入研修~先生の不安を解消しよう~

 

2018年7月26日(木)と30日(月)、子ども向けプログラミング教室“Tech for elementary”の講師を務める大村先生が、豊能の公立小学校で先生方を対象とした“プログラミング教育導入研修”を行いました。

 

この研修の目的は、先生たちに“プログラミング教育とは何か”を説明するのではなく、「これなら子どもたちに教えられそう」と感じてもらうこと。

 

不安からスタートした先生たちの気持ちは、この研修を通じて「まずは自分でやってみたい!」へと変化していきました。プログラミング教育が目指すことを実感としてお伝えできたのではないかと感じています。

 

「何から手をつけていいのかわからない」と感じている先生も、自校でのプログラミング教育のご参考に、ぜひご一読ください!

 

 

「プログラミング教育導入研修」の目的

 

 

研修を行ったのは、2018年4月から大阪府豊能郡で“こどもプログラミング教室 ひなたぼっこ”を開講する大村みどり先生。もともとはMicrosoftのインストラクター資格をいかし、大人向けのパソコン教室を運営していました。

 

今回の研修は、大村先生が娘さんの通う小学校の校長先生に児童向けのプログラミング研修を提案したところ、「児童向けの研修の前に、まずは教員向けの研修をしてほしい」と要望をいただいたき実現しました。

 

都心部と地方とで大きな格差が生まれつつあるプログラミング教育に対して、「豊能町に住む子どもたちにも、都心部の子どもたちと同じように学びの場を提供したい」と考えてきた大村先生。

 

プログラミング教育必修化の2020年が迫り、現場の先生たちから「何をしていいのかわからない」という悲痛な叫びがあがる今、自分にもできることがあるはずだと、自ら行動を起こしました。

 

 

校長先生の心配

 

 

大村先生から提案を受け、「二つ返事で実施を決めた」という公立小学校のM校長先生。ご自身は以前にプログラミングの研修を受けた経験があり、この教育が子どもたちの理解を深めるために、非常に有効なツールであることをご存知でした。

 

また子どもたちだけでなく、先生たち自身がプログラミング教育を通して、順序立てて子どもたちの理解を深めることや、的確な指示を出すことの大切さを学んでほしいとも考えていました。

 

一方で2020年をむかえる教育現場はプログラミング教育どころではない、というのが現状です。

 

英語と道徳が教科化され、評価対象に。当然ながら、それぞれの授業時間も必要になります。これまで中学校で学んでいたアルファベットなどは、小学校卒業までに習得することが求められるようになります。

 

M校長先生も、「このままでは、プログラミング教育まで手が回る気がしない」と感じていました。

 

「先生たちに、プログラミング言語を覚えてほしいわけではない。研修を受けただけで、授業で使いこなせるとは思っていない。それでも研修を通じてプログラミングの考え方を知ってもらうことで、苦手意識を減らせるのではないか」との思いで、この研修を導入してくださいました。

 

 

1日目:①先生たちが抱える不安の共有

 

 

研修は、先生たちがプログラミング教育に対する不安を共有することから始まりました。

 

【先生の不安】

・2020年までに、パソコンやタブレットなどの環境が整うのか

・ローマ字もままならない子どもたちが、プログラミングを学ぶ段階まで到達できるか

・自分自身、パソコンが得意ではない

・プログラミングに関する知識がないので、教え方がわからない

 

【なぜ不安なのか】

・何をどう教えるのかイメージできない

 

【どうずればその不安は解消できるか?】

・教室で使える副読本や、先生用のマニュアルがあればいいと思う

・自分でやってみて、経験があれば不安をぬぐえると思う

 

先生からのヒアリングを通して見えてきたのは、「知らないことが、不安の最大の原因である」ということでした。

 

大村先生は改めてこの研修での目標を、子どもたちにもわかる言葉で、プログラミングについて説明できるようになることとしました。

 

 

1日目:②私たちの身近にあるプログラミングの紹介

 

 

次に大村先生は、身近なところや学校生活の中にあるプログラミングを紹介しました。

 

「プログラムを作ることと聞いて、浮かぶイメージは何ですか?」との質問には、2種類のイメージが集まりました。

 

①身近な生活の中のプログラム

・運動会や学習発表会の演目
・予定やタスク

☞ プログラム=決められた順番どおりに進行するもの

 

②コンピュータ・ロボットなどからイメージされるプログラム

・コンピュータへの命令
・ロボットの動きを決めること

☞ プログラム=指示を出すこと、情報をやり取りすること

 

大村先生はこの2つのイメージをまとめ、「プログラミングとは、コンピュータとのコミュニケーションであり、人間の言葉が理解できないコンピュータと、意志疎通をするための順番通りに記された言葉であること」と説明しました。

 

“プログラミングとは何なのか”を自分の言葉で表現できたことで、先生たちの表情がやわらいできました。

 

 

1日目:③アンプラグドプログラミングの体験

 

 

先生の不安のひとつに、子どもたちがコンピュータを使いこなせない可能性があることがあげられていました。特に低学年であれば、タイピングはおろかマウスをうまく使えない子がいても不思議ではありません。

 

そこで大村先生が紹介したのは、“アンプラグドプログラミング”。先生たちには、実際に体を動かして体験してもらいます。

 

アクティビティ:ダンスダンスダンス

 

内容:「足ぶみ・手をたたく・まわる・ジャンプ・キック」という指示がひとつずつ書かれたマグネットを、プログラマー役(1人)の先生が自由に並べる。コンピュータ役(全員)の先生たちは、その指示通りに身体を動かす

 

 

ねらい:プログラミングのイメージをつかむ、コンピュータへの命令の出し方を考える

 

実際にやってみると、同じことをくり返す・決まった動作をすることに対して、

人間:間違いや疲れ、飽きることがある
コンピュータ:感情や体調に左右されない、新しい動作は思いつかない

といった特徴があげられ、“コンピュータとはどのような特徴を持ったものなのか”に対する理解が深められました。

 

またここでは、

ループ=同じ作業をくり返すこと
条件分岐=「もし~なら〇〇する」など、条件によって動作を変える

といった、プログラミングで使用する専門用語も紹介されました。

 

コンピュータを使わなくても、コンピュータやプログラミングについての理解を深める方法があるとお伝えできたことで、低学年でプログラミング教育を導入することへの不安も軽減されたようです。

 

 

1日目:④Scratchの体験

 

 

この日は先生たちに、タイピングができない子どもたちでも扱える、ビジュアルプログラミングソフト“Scratch”を体験してもらいました。

 

テーマは「水族館をつくろう」。TFEが、はじめてScratchにふれる子どもたちのために開発したプログラムです。

 

限られた時間ではあったものの、Scratchの楽しさのひとつに、デザインがあることを知ってほしいと、大村先生はあえてキャラクターも先生たちに自作してもらいました。プログラミングに苦手意識を持つ子どもがいても、お絵かきを通じてコンピュータは楽しいと感じてもらえることがあるからです。

 

 

用意された水槽の背景に、自分で描いた水中生物を泳がせた先生たち。指示に従ってプログラムを作成すると、それぞれの生き物が画面の中で泳ぎはじめました。

 

キャラクターは画面から消えたり、海底に刺さったり、お腹が上になってしまったり。大騒ぎになりながらも、「自分の作った生物には、こんなふうに水中を泳いでほしい」という思いは少しずつ形になりました。

 

 

なかには小学2年生が国語で学ぶ、スイミーをテーマにした水槽を完成させた先生も。

 

 

Scratchの体験を通じて先生たちは、「パソコンを使ってプログラミングをすること」への不安をぬぐえたようでした。先生たちからは「ぜひScratchを、学校のパソコンで使えるようにしてほしい」との要望が校長先生に寄せられます。

 

 

2日目:①「とにかく体を動かしてやってみることの大切さ」を学ぶ

 

 

2日目の研修は、チームで取り組むアクティビティからスタートしました。

 

アクティビティ:マシュマロチャレンジ

 

内容:パスタ・テープ・ひも・はさみを使って、できるだけ高い塔をチームで作り、その上にマシュマロを乗せて最終的な高さを競う

 

 

世界中で実施されたこのゲームは、どんな職業の人が優秀な成績を残したかがデータ化されています。

 

当然ながら建築家やデザイナーなど、建造物に関する知識の深い人は上位にランクインしていますが、意外にも良い成績を残しているのが幼稚園児。

 

そこからわかるのは、「とにかく頭で考えるより先に、体を動かしてやってみること。失敗しても何度も試行錯誤しながら何度も挑戦すること」でした。研修でも、「とにかくやってみよう」という声があちこちで聞かれました。

 

 

2日目:②授業案を作成するための情報を集めよう

 

 

2日目の研修では、「実際に授業を行うこと」に重点が置かれました。

 

大村先生はここで、「何から手をつけていいのかわからない」という悩みを解決するため、すでに実践されたプログラミング教育の授業の報告や、授業案を公開しているWebサイトを紹介しました。

 

まずはそれぞれ確認してもらい、興味を持った授業について、

・気がついたこと
・自分がその授業案を取り入れるとしたら、どの部分を工夫できるか

といったことを発表してもらいました。

 

 

公開された授業の様子を見ていた先生たちは、Scratchと同じように、子どもたちにも操作しやすいプログラミング言語(ビスケット)を活用して授業を行っている学校があることを知りました。「できそう」という気持ちがまた少し大きくなったようです。

 

操作方法を覚えたScratchを使ってできる授業はないかと調べるなど、すでにこの研修のねらいを実践に移している先生もいました。

 

 

2日目:③Scratchの使い方を他の人に教えよう

 

 

2日目の研修では、1日目に体験したビジュアルプログラミングソフト“Scratch”の操作方法を、ペアになったもう一人の先生に説明するという課題が出ました。

 

実際の授業にパソコンを使ったプログラミング教育を取り入れていく過程では、パソコンの使い方やScratchなどのソフトの使い方を、子どもたちが理解できるように説明する必要があります。

 

研修の最初に悩みを共有したときは、子どもたちがパソコンをうまく使えるか、自分がうまく説明できるかを心配していた先生もいました。

 

先に生徒役になった先生は、「まっさらな状態の子ども」を演じながら、教えてくれる先生の良いと感じたところと、改善すべきポイントに注意しながらレッスンを受けます。フィードバックが完了したら、役割をチェンジ。

 

それぞれが担当している学年を想定しながら、低学年にとっての必要な声かけや注意すべき操作方法など、具体的な指導例をイメージすることができたようです。1日目のScratch研修でつまずいた箇所については特に、ペアを組んだ先生の説明の仕方から、たくさんのことを学べたと話す先生がいました。

 

「子どもの立場に立ってプログラミングをしてみると、“自分の願いをパソコンにかなえてもらった”ような気持ちになった」と発表してくれた先生も。

 

この言葉は「子どもに伝わりやすい!」とたくさんの先生が共感していました。

 

 

実践の多かった2日目の研修はここで終了。

 

すでに「何をすべきか」が見つけられた先生たちからは、

・授業に取り入れられるよう、Scratchやビスケットなどの使い方に慣れたい

・2~3学期中に一度は、プログラミングの授業ができるように準備したい

・プログラミングがゴールではなく、ツールであることが納得できた

・プログラミング教育の楽しさを教師自身が知ることが大切

といった、具体的な目標や感想をいただきました。

 

ふり返りシートにも不安な気持ちを感じさせる感想はなく、具体的な課題をどう解決していくか、といった前向きなものが多く見られました。

 

 

プログラミング教育をスタートさせるために

 

 

参加してくださった先生からは、「不安に思っていることや、わからないことをまず誰かに話し、一緒に解決していくことが大切だと思った」というお話をうかがいました。

 

今回の研修では、不安の原因を明らかにし、解決するための方法を探り、他の先生が持つ技術を学べたことで、当初の漠然とした不安は、「何をすればいいかわかった」という状態に変えられたようです。

 

2020年を目前にし、先生をサポートする講習や研修の機会は増えてきています。プログラミング教育について学ぼうとする先生を、学校が後押しする動きもあります。

 

誰もが「やらなければならない」と感じているこの問題は、最初の一歩さえ踏み出せば、必ず次につながります。

 

Tech for elementaryでも、学校でのプログラミング教育を積極的にサポートしています。費用や時期、対象(教員・生徒)など、様々なご相談をお受けしていますので、サイトまでお問合せください。

 

プログラミング教育を通じて、子どもたちが未来を生きぬく力をつけられるよう、全力でお手伝いしてまいります!

 

 

講師:大村 みどり (こどもプログラミング教室 ひなたぼっこ:大阪府豊能郡)
サポート講師:大礼 有里 (パソコン教室パソノワ:兵庫県三木市)

 

 

Text by 黒田 靜

 

 

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